パランティアシーンの裏話 ハセオは何故、ハルバラドを伴ったのか。
「いっしょに行ったのは、彼の同族ハルバラドだけだ。だけど暗い疑念か心配事が彼の心を占めて離れないようだ」byレゴラス
サウロンとパランティアで対決する際、アラゴルンはハルバラドだけを伴っています。ローハンでの合流の際の熱烈抱きつき歓迎と伴に、アラゴルンにとってハルバラドがどうも重要っぽいポジションにいる事を伺わせるハルアラ好きーにはめっさ美味しい場面です。だって「ハルバラドだけ」ですよ、だけ!そこに深―い絆と、美味しそうな裏事情の匂いがするじゃありませんか。(ところで、ここ原文だと、何て書いてあるのでせう?)
さて、何故ハルバラドを伴ったんだと思いますか?
アラゴルンが対峙する相手がサウロンという強大な敵である事から、原作を読んだ時、護衛もしくは何かあった際に事後を託す為なんだろうなと思いました。
でも、護衛の為と考えると、そもそも、サウロン相手に剣なんか意味がない。おまけにパランティアを通しての精神戦なワケだから、いくらハルバラドの腕っ節が強かろうと、そもそも同行することに意味がない。だとしたなら、いったい何の為にハルバラドを伴ったのか。
勝利を確信していたなら、独りで行くハズ。でもアラゴルンは「疑念」と「心配事」を持ったまま挑んだ。となると、ハセヲは万が一の最悪の事態に備えたとしか思えない。そして、この場合最悪の結果とは、死ぬことではなく、サルマンのごとく冥王の傀儡に成り果てる事のように思える。丁度、パランティアによって、サルマンが堕落したのを見て来たばかりなワケだし、ハセヲは自分の命の優先順位は低そうだし。
白の魔法使いと言われたあれ程のイスタリでさえ堕落したのなら、いくら正等なパランティアの正当な所持者だろうと、自分は所詮誘惑に弱い人間。ハセヲが一番心配したのは、パランティアを通して冥王に取り込まれることだったのではないのか。
ハセヲがハルバラドだけを伴ったのは、いざという時、自分の命を絶つように命ずる為だったのではないか。
そう思った途端、むくむく切ない主従のやり取りが浮かびました。映画から入ったヒトなのに、原作を読んでまっしぐらにハルアラに落ちたのは、ひとえにこの妄想の故じゃないかと。
さて、この解釈、ハルアラ好きーなら知らぬ方はいないでしょう。
ハルアラの素晴らしき先達、おくまるさまが名作「野伏」の中で、ハセヲに向かって剣を構えるハルバラドを緻密で美しい情景で書かれておられます。「星を仰ぎて」を書くにあたり、おくまるさまには、パランティア対決シーンで自分も同じ設定で書くことになるのですがと、おずおずご相談した際、暖かくも懐深いご返事を頂戴して背中を押していただきました。
遅ればせながら、この場を借り、おくまるさまへ敬愛をこめて、深く深く御礼申し上げます。
おくまるさま、その節は本当にありがとうございました。
< ブラウザ閉じ>