このひとにこんな劣情を抱いている事は、本当は知られたくなかったという気持ちもある。
でも、こうして触れたかった。あの唇を吸い上げて、頬を撫でて、自分に繋いでしまいたかった。
「あ…あ、っ」
 ミナス・ティリスで会った頃、長く続いた身を偽る生活と絶え間ない戦争の為に、その容姿をすり減らしているように見えたが、今はまるでエルフのように美しかった。この姿でエルフの姫と愛を誓ったのだろうに、自分とこんな事をしている彼が哀れに思えた。
彼は今ハルバラドと繋がって息を乱して、自身の欲望も滾らせている。綺麗に梳られただろう髪を汗で身体に張り付かせ、簡素な寝台に押し付けられて身を捩って喘いでいる。


 片恋なのは分っている。もしかしたらそんな生ぬるいものですら無いのかも知れない。父祖より受け継いだ血を、絆を、妄念を糧に生きているような我らなのだから。
「アラゴルン…っ」
 名を呼ぶだけで張り裂けそうだ。彼を傷つけたくなくて、否と懇願されるまで揉み解して濡らしてやった。
同時に目茶目茶にしてやりたくて、荒々しく貫いた。どうせ抵抗などしないのに、頭上で両手を拘束して。それを仰け反って受け入れる様は、今まで見たどんな彼よりも哀れで愚かで美しかった。
「あ…は…、ハル、バラド…っ」
 閉じていた眼を開けて、彼はハルバラドを見つめる。それはちゃんと欲に濡れていてハルバラドを安心させた。
独りよがりに彼に情けを垂れさせたわけではないのだと。
「アラゴルン…」



力の抜けた両足を抱え直して奥まで窺う。傷だらけの身体に掌を這わせ、汗ばんだ肌を撫でる。
胸元を彷徨うと赤く色付いて立ち上がっていた。そっと転がして喘がせると、指先で摘み上げて更に煽る。
溜息をつくたびちらりと覗く舌の色にそそのかされて、ハルバラドは深い口付けを望んだ。
 それはアラゴルンの舌が絡まり、口唇を吸い上げ、口腔中を嘗め上げる。その淫靡な感覚にハルバラドは夢中になる。
彼の手はハルバラドの顎を捉え、髪をかき回し、首根を抱いた。体内に埋められた存在に半ば屈服させられながら、相手をあやし、煽り、手懐けてゆく。 熱で火照った身体をきつく抱けば、汗で張り付いてより離れ難くて、ハルバラドを虜にした。思いもかけないほど素直に愛される彼に、嬉しくて辛くて申し訳なかった。だが、もう二度と離したくない。
「ああ…あっ、あっ…――あ、ハ、…ル…」
余裕を無くしたハルバラドがありったけの熱を込めてアラゴルンの身体を揺すった。若い情熱に貪るように追い詰められて、
アラゴルンは逃げ道を塞がれてしまう。高い嬌声を放って彼を受け止める事ですら精一杯だ。
「アラゴルン…っ!」
「――っ……!」
アラゴルンの身体が強張り、喉を反らして一瞬時を止める。密着した腹に熱い解放を感じてハルバラドは自分も倣った。
彼の中に絞られてハルバラドは歯噛む程感じた。愛しいなどでは足りない。どうしていいか、分らない。

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らぶと忠誠心が混じって(これぞ腐女子萌/笑)、どうしていいか分らないらしいです。
上司が過剰フェロモン発生装置ですから、可哀想に。(スルガさまご本人によるミニ解説)

 




「らぶと忠誠心が入り混じった葛藤」これぞ、ハルアラの神髄!
ハルアラの醍醐味をひと言で言い表すとは、スルガさんするどい!さすがです!
最後の「愛しいなどでは足りない。どうしていいか、分らない。」の一文がぐっときました。分かるよ〜ハルちん、その気持ち!ホントに、大変な上司を持ってしまったもんだ。
スルガさんのサイトで連載中のデネソロは、どうやらハルアラでもあるとのことなので、ワタクシか〜な〜り〜期待しております。
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